Candy Spoon
ライブ終わりの感激にぼんやり浸っていると、ポタちゃんがパタパタと羽を振るわせる。
「葵くん行っちゃったポタ……もう会えないポタか……」
今にも泣きそうな顔だ。
そうだ、ポタちゃんを葵さんのもとへ返さないと。
だけど、どうやって返したらいいんだろう…
とりあえずライブハウスから出て、解決策を考えることにした。
ライブ後の出待ちは禁止されているようで、葵さんを待ち伏せするわけにもいかない。
どうしようか途方に暮れていると
「ポタちゃん」
遠くから男の人が、こちらに向かって走ってきた。
よく見ると、さっきステージにいたギターを弾いていた葵さんのようだ。
「ポタ〜!ポタ〜!」
ポタちゃんは葵さんのもとへ行き涙を流している。
「もう会えないと思ったポタ…よかったポタ!うわーん!!」
葵さんは泣いているポタちゃんを、よしよし、と撫でている。
無事に再開できてよかった。
これで私の任務は完了だ。
ポタちゃんに小さく手を振って帰ろうとすると
「待って。ありがとう」
葵さんが私に頭を下げた。
ポタちゃんは
「ましろちゃんが、ボクちんのこと助けてくれたポタ!ましろちゃんと、このままお別れは嫌ポタ!お家で一緒に遊びたいポタ!」
と両手をパタパタさせる。
私と離れるのが悲しいみたいだ。
私もさっき知り合ったばかりとはいえ、ポタちゃんと離れるのは寂しい気がした。
かと言って、初めて会った男の人の家に行くのは気が引ける。