Candy Spoon
葵さんの家は、ライブハウスからそんなに遠くない距離にあった。
思っていた以上に立派なマンションで緊張する。
「お邪魔します…」
靴を脱いで中に入ると、広いリビングに通された。
家具は黒を基調としていて、かっこいい部屋だ。
家の中は、微かに葵さんが付けている香水の匂いがする。
ポタちゃんが、一緒にお絵かきをしようって言うから、お絵かきをすることにした。
ポタちゃんって絵が描けるんだ、と感心していると
「俺、シャワー浴びてくる」
と言って葵さんは行ってしまった。
ポタちゃんの絵は上手で、私の似顔絵を書いてくれた。
私もポタちゃんの似顔絵を描くと、ポタちゃんは喜んでくれた。
お互い夢中になって絵を描いていると、夜の11時半を過ぎていた。
30分くらいで帰るはずだったのに、うっかり2時間近く遊んでしまった。
体感だと、30分くらいしか経っていないはずなのに…
こんな時間じゃ終電が無くなっちゃう…というか、もう終電ないかも…
「ポタちゃん、どうしよう。私、家に帰れないかも」
「ポタ!今日は泊まるポタ!」
ポタちゃんが、にんまりと笑っている。
葵さんのほうを見るとソファーの上で、うたた寝をしている。
ライブ終わりだから疲れているんだろう。