Candy Spoon



急な泊まりになって、着替えを用意していないことに気づいた。
シャワーを終え、さっき着ていた服を着直して、リビングに向かう。




「これ、着替えなかったら使って」
葵さんから受け取ったのは着た形跡のない、綺麗に折りたたまれたTシャツだった。

「えっ、新品なのに使っていいんですか?」

「これバンドのTシャツ。試作のやつ」


バンドのTシャツなんてあるのか、と思いながらお礼を言って、浴室に戻る。

葵さんから受け取ったTシャツを着てみる。
オーバーサイズでちょうどいい。






再びリビングに戻ると、葵さんはソファーの上に枕と毛布を置き、寝る用意をしている。

「そっちの部屋にあるベット使っていいよ」

隣の部屋を見ると大きなベットがある。
さすがに急に来た私がベットを借りるわけにはいかない。
それに、葵さんは背が高いから、ソファーで寝ると体がはみ出てしまう。

「私がこっちでいいです!」
そう言ってソファーを指差す。

「いや、お客さんをソファーで寝かせるのは…なんか…」



数秒の沈黙。

「じゃあ、一緒に寝る?」

葵さんは表情を変えることなく、そう私に問いかけた。

一緒に寝るなんて、どうなの?!と思った。
もしかしたら冗談?
もし冗談だとしたら、本気で返すのは何か違う気が…

「わー一緒に寝るのもいいですねー」
でも、他の方法もないですかねーと言いかけたとき



「じゃあ、そうしよ」



どうやら葵さんは本気で言っていたようだ。
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