桜が咲く前に
千紘先輩へ
冬の日。
コートを羽織っても、もこもこマフラーを首に巻いたって、氷を直接肌に当てたようなひんやりした空気には勝てない。
雲が空に浮かぶ度に降る雪には飽きてしまった。
でも、いちばん憂鬱なのはそんな寒さではなくて。
―――今日が二月二十八日だってこと。
「妃依(ひよ)、帰れる?」
「帰ります!」
明日から三年生は自由登校という名のお休み期間に入る。
私、小松(こまつ)妃依の想い人、久喜 千紘(くき ちひろ)先輩だってその一人。
千紘先輩へ向いた恋に気づいてからもうすぐ二年、あの日から胸の中に隠したまま未だに伝えられていない。
でも、先輩はあと一ヶ月で卒業してしまうから。理由が無いと、簡単には会えなくなってしまうから。
絶対、絶対に私から言いたい。
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