桜が咲く前に
「ひよちゃん、こっちは日比斗(ひびと)っていうの!私たちと同い年だよ、キッチン担当!」
「あ、小松妃依です!今日からよろしくお願いします!」
「…よろしく」
わあ、目が合わない。
男の子、日比斗くんはその一言で、着替えを済ませてすぐ控え室から出ていってしまった。
一緒に働いている歴一年、アンド幼馴染の花ちゃんが言うには、ただの人見知りらしい。
けれど、私も社交的には含まれない性格の持ち主なので、仲良くなれるか心配だった。
「うーん…?」
朝から学校で放課後からはバイト、夜には千紘先輩宛てのメッセージ作成。二月に入ってから、ほぼ毎日そんな日々を送っていた。
一週間経って一文も完成していないのに、眠気に負けてスマホの画面はそのままに寝てしまう。
そうすると案の定充電切れで、千紘先輩からのメッセージを返せなかったりもした。
“千紘先輩へ”
長くても千紘先輩なら読んでくれるのは間違いないけれど、出来るだけ読みやすくしたい。
…好きになったきっかけとか、入れた方がいいのかな。