桜が咲く前に
―――あの日、全部が初めてだった。
憧れていた高校の制服に腕を通すこと、慣れない通学路を歩くこと、周りは知らない顔ばかり。
学校に咲く満開の桜はその花を揺らして、私をおいでおいでと誘い込む。
普段は心和む桜でも、今日は無理に背中を押されているようで、余計に緊張を大きくさせた。
大丈夫、大丈夫…憧れの高校生になるために頑張ってきたんだもん。
雑誌を読み漁って学んだオシャレもメイクも。
中学生の頃の、部活でいっぱいになっていた私はもうおしまい。
キラキラで可愛い女子高生になれますように!
下駄箱で靴を履き替えてから、奥で出席の確認と胸に付ける花を貰うことになっている。
二年生か三年生かの区別はつかないけれど、先生の他に代表の先輩たちが何人か立っていた。
着崩しているからか、着慣れているからか、私の硬い制服とは別物みたいに似合って見える。
…私も一年後、こうなってるのかなあ。想像つかないや。