桜が咲く前に
少し並んでいたらあっという間に最前列で、机を一つ挟んだ距離で声をかけた先輩。
それが千紘先輩だった。
「次の人、名前お願いします」
「は、はい、小松妃依で…」
目が合って息が止まった。その間だけ周りの音が聞こえなかった。
格好いい、はもちろん思った。
この距離でもわかるまつ毛の長さ、計算されて置かれてるの?っていうほどの綺麗な顔のパーツ。
それだけじゃなくて…妙に気持ちが落ち着いたの。この人の空気感みたいなものなのかな。
ドキドキ、じゃなくて、もっと違う音がする。
変だ。
だって今顔を合わせたばかりで、聞かれたのは名前だけ。答えたのも名前だけ。
この人の事何も知らないのに、どうして?