桜が咲く前に
「入学おめでとう。花は左胸に付けてね、安全ピンだから気をつけて」
「…ありがとうございます」
私はその水色の花を受け取るなり顔をしかめた。
安全ピンが苦手。というか先端がとがっているもの全般鳥肌が立つほどに嫌い。
小学生の頃、ホチキスで間違えて自分の手を…とか思い出すと余計にできなくなってしまう。
…がんばれ、お花刺さないと入学できないぞ。
付けてから自分の教室に向かう人たちを横目に、隅っこで座りこむ。
こ、こわい…
テープで留めちゃ駄目かな。持ってないけど。他の人に頼む勇気なんて無いし、お母さん達は体育館にいるだろうし。
頭がぐるぐるする。お花一つで体調を崩しそうになる私はちゃんと人並みの高校生になれるんだろうか。
「一年生、どうした」
「…え」
見上げると、さっきお花を渡してくれた先輩が立っていた。先輩がかがむと私のおでこに手を当てる。
な、なにこれ、近い…!