桜が咲く前に



高校生活一日目、緊張が重たく乗っかっているような今日だからこその話。




おまけに初めて会った先輩にこうやって迷惑をかけたり。





今日は“悪い日”だって、そう思った。





「悪いことが続いちゃって…あ、でも大丈夫です!切り替え得意なほうなので!
なのであの、早く戻らないとまた怒られちゃいます」




なんだか、この人は私の話が長くても何時間でも聞いてくれるような気がする。




先輩の纏った空気に飲まれて甘えてしまいそうで、慌てて言葉を止めた。




それに、先生にまで目をつけられてしまったら大変だ。先輩、素行の悪い人には見えないし…




「…先輩?」




それでも腕を離す素振りを見せない先輩は、ポケットから出した飴を私の手のひらに乗せた。




…さくらんぼ味?好きなのかな




どうしてこのタイミングで…?って思っていたことが伝わったかのように先輩が口を開いた。


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