桜が咲く前に
「じゃあ今日の悪いことはもう終わり。今からは良いことばっか起きるよ。
この飴、良いこと一個め」
「良いこと…」
「良いこと見つけるのが下手なだけじゃん?
これから、良いこと無かったら俺のとこおいで。俺が指さして教えてあげるよ」
───好きだって思ってしまった。
この人無しでこれからの高校生活を過ごしていける気がしない。
多分、これから毎日校内で先輩を探してしまう。
この人の隣にいたい。
「飴、一生大事にします」
「食べろ」
私がその日恋に落ちたのは、名前しか知らない先輩だった。