桜が咲く前に
自由登校前、千紘先輩が「免許取ることばっか考えてたらあっという間に卒業だな」ってポソッとこぼした時があった。
卒業することは当たり前のように分かっていたけれど、なんだかイメージがぼんやりで。
学校に千紘先輩がいないってどんな感じなんだろうって。
今だって、会えなくなってから一ヶ月も経っていないのに寂しくてたまらない。
だけど、笑って卒業してほしい。
千紘先輩のことだから私の事が心配だって言うはず。それくらい私は先輩に甘えてばっかりいた。
大丈夫だよって笑って見送りたい。
“今日、良いこと見つけたよ。雪に埋もれた四つ葉のクローバー”
“ハートに見える!可愛いです!”
そう打ってから写真を保存した時、端の方に写った手に気づいた。
千紘先輩は写真を撮るのが下手。ブレているのはいつもの事で、これは何を撮ろうとしたの?って思うほど。
今日は真っ赤にかじかんだ先輩の指が写っていた。