桜が咲く前に
…それと、私のメッセージを打つスピードが遅すぎて、千紘先輩への返事を打つのに精一杯。
全然、切り出せない。
「ちょ、ちょっとまって。私今どこの返事してる…?」
“誤字多すぎ。眠いの?
絶対ベッドかなんかに横になって返事してるだろ”
今わかった。
表情も声音も伝わらないメッセージは、私にとって高難易度だってこと。
今もほら、私が眠たい前提で話が進んで……まずい、この状況。眠らされるのでは…?
“まって先輩!私きょうつええええ”
わわ、誤字…!
“寝ぼけっ子はもう寝なさい。俺、呼ばれたから隣の部屋行ってくるよ”
“空いてる時連絡する、おやすみ”
…もしかしてメッセージが一番向いてなかったんじゃ。
私はその夜、“隣の部屋”の人が千紘先輩に気があるかないかで不安になりながら浅い眠りについた。