桜が咲く前に
好きの一言で気まずさなんてどこかに消えて、私は前のめりで日比斗くんに話しかけた。
いつ好きになったとか、どんなところが好きだとか。
ぶっきらぼうに話すのに、優しげな顔で話すから、こんなに想われている花ちゃんが羨ましくなるほど。
「ひよは?最近休憩中にスマホ見てによによしてんじゃん」
「えっ」
ああ、花ちゃんが日比斗くんの肩を叩いて二人で私を見つめている光景が目に浮かぶ。
花ちゃんはその時の私と同じようにによによして、日比斗くんはそんな花ちゃんを見てるんだろうな。
そんなににやけてたかな…いつだろう。
たしかに、バイトを始めてから会えていないからちょっとでも空いた時間にメッセージを交わすことが多くなった。
会えていた時は必要最低限の会話しかしていなかったけれど。
私が充電し忘れた時のメッセージが好き。“水没?睡眠時間?学校置いてきた?”と色んな可能性を送ってくる。