桜が咲く前に



結局、夜遅くに送ってくれたそのメッセージを見るのは次の日で、私の“ごめんなさい”から始まる。




一日の最後に送られてくる“おやすみ”だけできゅんとする。




バイトの休憩中にメッセージがくるといつもの十倍頑張れる。




でも、それを見られてたとしたら…と、途端に恥ずかしくなって手で顔を覆った。




「好きなとこは?」



「言わない…」



「俺は言った」



「…忘れさせてくれないところ」




入学式に貰ったさくらんぼの飴。寒くてすぐに引き返した駅前のクリスマスツリーはたったの二十秒。




時間にすると短い思い出なのに、ずるいほど私の中に残るから、思い出した分だけ好きが大きくなっていく。




一日中、先輩ばっかりだ。




…あの、キス未遂みたいなことも。




今まで、あの状況を思い返すと恥ずかしさで溶けてしまいそうで、考えなかったけれど。


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