桜が咲く前に



私は…あのままくっついてもいいって思った。




こんなこと思ってるって千紘先輩が知ったら、引かれちゃうかな。




「…うう」



「照れてる」



「…日比斗くんだって照れてたよ。明日、バイトで花ちゃんに会って顔に出ないか心配」



「顔に出したら俺も何言うかわかんないからね」



「ふふ、怖いなあもう」




夢中で話していたらいつの間にか駅の近くまで来たことに気づいた。お店や電灯で段々と明るくなっていく道を少し歩けばすぐ駅に着く。




ここまででいいよ、と声をかけようとしたその時、後ろから誰かが私の腕を掴んだ。




「っな、なんです、か……え、なんで」



「───驚いた?ただいま」




驚くに決まってる。なんで目の前にいるの?明日帰るって聞いてたのに。




私の反応を見て笑う目の前の彼は、久しぶりだからか大人びて見えた。




「…おかえりなさい、千紘先輩」


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