桜が咲く前に
朝にあった出来事ははっきり思い出せる。
千紘先輩の声も、表情も。
…あれ、あれ?あれれ?
私、千紘先輩に「卒業おめでとうございます」って言った?
ガララ…
「ごめん、待たせた…いやなにその顔。振られたの?」
千紘先輩にしか告白してないってば…なんて言い返す気力もなく自分の席で突っ伏す。
なんて余裕が無いんだろう。
朝、千紘先輩の声を聞いた瞬間から頭が真っ白になってしまった。
告白の前に言いたかったのに。
最初で最後だったのに…
「ほら、言いなよ」
私の前の席の椅子を引いた千紘先輩は、後ろを向いて座った。
卒業証書の入った筒に、胸に付いたピンク色の花、重たそうなカバンには持ち帰らないといけない教科書。
今日が最後だよって言われているみたいで余計に罪悪感が膨れ上がる。