桜が咲く前に



「…聞いてた?」



「俺といるのが楽しいし幸せで、だからお返ししたいなってことくらい」



うん、全部だ。全部聞かれてたんだ。ある意味あの日から既に100%だったってことになる。




なんで気づかなかったんだろう…もしかして、ミナちゃんは知ってた?




そう言われてみればあの時ちょっと変だったし、後ろ扉から見ていたなら、前を向いてミナちゃんと話していた私は気づかない。




目の前の彼はご機嫌そうに、私の髪をいじっている。




…近い。




私たちの距離っていつもこうだった?好きって伝えたから近く感じるの?




だけど、息がしずらいこの距離が愛しく感じるなんて、私は相当千紘先輩が好きらしい。




「妃依はいつ俺のこと好きになったの?」



「…初めて会った日です」




そう答えると千紘先輩は優しく目尻を下げるから、何故か泣きそうになる。




その表情だけで私への気持ちが伝わったから。




私の千紘先輩への想いと同じくらい、千紘先輩は私が好きなんだ、って。


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