桜が咲く前に



それから一週間後、今度こそと意気込んだのは千紘先輩のお家にお邪魔した休日のこと。




ご両親はここから少し離れたところに住んでいて、高校が決まってから、朝少しでも長く寝られるようにと引っ越したらしい。




最近、次の春に高校一年生になる弟さんの千彰(ちあき)くんと二人暮らしを始めた。




千彰くんは千紘先輩の足りない部分、主に思いやりや天真爛漫さ、天使な要素を全部もっているような男の子。




色に例えたら、千紘先輩は黒、千彰くんは白。




「…なんか黒い」




そんな事を考えながら手土産として買ったドーナツは、チョコレート、黒蜜、ごま…ほとんど黒色だった。




「千紘先輩のこと考えて選びました」



「どんなことイメージしたらこうなんの」




紅茶かコーヒーか二択を尋ねるとキッチンへと向かう千紘先輩。




何度来てもやっぱり落ち着かないこの状況。




逆に千紘先輩が私を何度も呼んでくれているのは、私にそういう気持ちを持っていないからなのかもしれない。


< 7 / 47 >

この作品をシェア

pagetop