桜が咲く前に
「足崩せ。前来た時痺れて動けなくなったの忘れた?」
「…はい」
―――ああ、やっぱり。
私がソファーに座らない理由。
今までこの家で、千紘先輩は私と並んで座ったことがないから。
最初にお邪魔した時、たしか私はソファーに座った。そしたら何故か千紘先輩はカーペットに座って。
その日は、定位置がそこなのかな、とそこまで気にしていなかった。
「ホットカーペット付けたから下座りな」
…なんで、私がカーペットに座ると千紘先輩はソファーに座るんだろう。
その日から気になってしょうがないこと。
座る場所なんて、きっと“どうでもいい”部類に当てはまると思う。千紘先輩だって無意識かもしれないし。
でも、精一杯手を伸ばしても触れられないような離れている距離がもどかしい。出来れば近くにいたい。
伝えるなら目を合わせて伝えたい。