成人女性
 外国語学習とは机に向かって本を読んだり書いたり、あるいは声に出して学ぶものばかりである。
 所詮は勉強なのだから当たり前だといえばそうなのだが、やはり義務感や真面目な理由で始めた勉強よりは趣味の延長線で学び始めた言語の方がよく上達しているように思える。
 まさに、好きこそ物の上手なれというものである。
 趣味の派生として始めたイタリア語とフランス語はめきめきと上達したが、話者人口が多いという理由で始めた中国語やスペイン語は一向に上達した気がしない。
 どうして始めたか分からないポルトガル語も然り。
 イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語の四つは基本的な文法や単語が似ているために勉強にもあまり困ることはないが、趣味の延長で勉強を始めた言語で唯一苦戦しているものがある。
 料理が好きだという理由で始めたロシア語がそれだ。
 半年ほど勉強してやっとアルファベットが読めるようになり、文法もなんとなく理解するようになったが、筆記だけは永久にできないと思っている。
 ロシア語を書くときはブロック体ではなく筆記体が(おも)らしいのだが、筆記体を調べてみてあらまあ驚いた、どれも同じに見えるのである。
 試しにルースキ(ロシアの意)と書いてみたところ、繋がったミミズのように見えてしまった。
 ブロック体が主流の英語で筆記体を使っても使ってもなんら違和感は無く、むしろ洒落たように見えるものだが、私の書くロシア語の筆記体はどう見ても地面を()うミミズの群れである。
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