成人女性
 
 高校三年に上がる頃には既に数学に対する苦手意識はぐんぐんと伸びて背を高くし、花まで咲きそうな勢いであった。
 三年になった私たちは、受験を控える、しかも難関国立や医師薬、難関私立を目指す人の集まるクラスで学校の中でも肝入りであった(はず)で、受験を意識してか定期考査に模擬試験の問題や何処かの入学試験の過去問題が入ることがあった。
 記憶が定かではないが、とある年度の模擬試験がそのまま定期考査になったこともあったような覚えがある。
 おかげさまで私は赤点の連続であった。
 三十点を超えるか超えないか、赤点回避か赤点か。
 それだけが私の戦いであった。
 毎回あえなく敗戦していた。
 命虚しく、去りゆく私の成績点である。
 他の科目は難なく七十点くらいは取っていたが、数学は二十点。
 ひどい時は十点。
 ある夏休み明けの日に成績に入らない実力考査が実施された。
 成績に入らないということを聞いた私は無論勉強していない。
 受験のためには苦手科目を克服しろとよく言うが、私の苦手な数学は既に手遅れだと見切って、得意科目を伸ばす方に手を出した。
 要は数学を切り捨てたわけで、当然数学の課題もろくにせず、解答をそのまま書き写して提出したので、本当に、全く勉強ぜずに受けた試験である。
 答案が返却されて笑ってしまった。
 八点である。
 私はあまりの点数の低さに笑ったのではない。
 勉強しなくても八点も取れたことに対する喜びから笑いが出てしまったのであった。
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