成人女性
　そんな数学弱者の私であるが、一度だけ数学の定期考査で七十三点という過去最高の得点を叩き出したことがある。
　これまでの試験で取った数学の点数があまりに低いので数学が欠点になってしまうかもしれないという状況であった。
　どうにかして数学の成績を上げないと留年になってしまう。
　私は電卓とこれまでの赤点の答案を片手に次の試験で何点を取れば欠点を回避できるかを計算した。
　四十五点取れば欠点は回避できることが分かったが、とにかく数学が出来ないので、その試験の時は試験日の三週間前から数学だけに専念して他の科目の勉強を一切しなかった。
　その時は家にも数学の不出来が露呈していたので塾にも通っており、朝から夕方まで、授業中も休み時間も全て数学に費やし、塾でも数学、家に帰っても数学という数学漬けの三週間を過ごした。
　驚くことに自主勉強で数学を学ぶのはそれほど苦痛ではなかった。
　ひたすらに数学を勉強し続けて受けた試験は、問題を見ると手がスラスラと動いてしまう、某通信教育の宣伝漫画にありそうなシチュエーションで、手応えも抜群であった。
　五十点は間違いなく取れた。
　そう思って返ってきた答案には七十三点と書かれていたのである。
　その日は欠点を、そして留年を回避できたことにただ安堵したのであった。
　ただしその代償は大きいもので、数学以外の科目は全てグンと得点が下がり、五十点を超えるものはなかった。
　数学以外の科目の成績こそ、それまで積み上げてきたもののおかげで影響を受けなかったが、一部の先生からは突然得点がひどく下がったので心配してくださった方もいた。
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