成人女性
 私が初めて鑑賞したフィルム映画は小津安二郎(おづやすじろう)監督による原節子(はらせつこ)さん主演の「東京物語」である。
 国内外で高い評価を得た作品であるが、この「東京物語」から私のフィルム映画への愛は始まった。
 言わずと知れたことかもしれないが、まず「銀幕スタア」と呼ばれる方々はどなたも本当に美しい。
 そしてどの作品も監督のこだわりを感じる、構図やカメラワーク、音や光の演出がある。
 さらに、ほぼ必ずと言って良いほど、単数なり複数なり考えさせられる主題がある。
 私は「東京物語」に出会ってまず主演を務められた原節子さんの美しさに目を奪われた。
 所作や発音のひとつひとつが「美しい」という表現以外に当てようがないほど上品である。
 そして原節子さんの他の出演作を探して出会ったのが成瀬巳喜男(なるせみきお)監督の「めし」で、ここで上原謙(うえはらけん)さんと高峰秀子(たかみねひでこ)さんという二人の役者さんを初めて見ることになる。
 「絶世の二枚目」と呼ばれ人気が後を絶たなかった上原さん、日本映画史上最多受賞など素晴らしい功績のある高峰さん。
 お二方とも戦前から活躍された方々だが、「めし」が公開された五十年代頃は演技も洗練され、本当に素晴らしい役者であると感じる。
 さらに上原謙さんと高峰秀子さんが共演する作品として「三百六十五夜」に出会い、高峰秀子さんの出演作として「カルメン故郷に帰る」「銀座カンカン娘」をはじめとした多数の作品を鑑賞してきた。
 さらにフィルム映画の世界にのめり込み、気がつけば戦前の映画を見始め、田中絹代(たなかきぬよ)さんや桑野通子(くわのみちこ)さん、佐分利信(さぶりしん)さん、灰田勝彦(はいだかつひこ)さんなど素敵なエンターテイナーに出会うことになる。
< 32 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop