成人女性
 モボ・モガには品性があった。
 彼ら彼女らは洋服を着崩すことなくピシッとした服をキチンと着こなしている。
 歩き方も揚々としている。
 そしてモボ・モガというのは大抵良いところの坊ちゃんかお嬢様である。
 これを言ってしまうと元も子もないのだが、日本にいつからか登場した見えない社会階層が大いに関係しているのである。
 ミレニアムファッションの担い手は駅前で屯していたかもしれない。
 モボモガはカフェーで紅茶を嗜んでいたかもしれない。
 こういうことである。
 非常に前時代的で頭のカタくオモシロくない考え方であるが、やはり私はモボモガとまではいかなくとも、サーキュラースカートくらいは社会現象になっても良いのではないかと思う。
 この話をしている当の本人は、只今白Tシャツにジーンズ、スニーカーにトレンチコートという服装である。
 モボモガなどと言っている割には腕にスマートウォッチをはめて、空港のラウンジでオレンジジュースを飲みながらパソコンのキーボードを叩いている。
 紙の原稿は使わず、時計も持っているが普段からスマートウォッチ。
 ブレインストーミングはタブレットで行い、文章という文章はパソコンで書く。
 昭和は戦前はと嘆いていながらも、現代の技術はキチンと享受している。
 しかし露出の高い服を着ていないことは決定的であり、自分の中では一定以上の節操を保っているつもりである。
 私は現代の技術の進化は素晴らしいと思っているし、この時代に生まれて良かったと思っている。
 唯一気に入らないのが、情緒である。
 昔のような情緒がない。
 私を含め満員電車に揺られ机の前に座りキーボードを叩くだけの無味乾燥な日々を過ごしている現代人の心はどこか冷めきっているような気がする。
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