成人女性
 フィギュアスケーター。
 これは私の夢見ていた職業のひとつである。
 薬剤師。
 これも私の夢見ていた職業である。
 コンサルタント。
 これは私がなる予定の職業である。
 フィギュアスケーター、薬剤師、コンサルタント。
 年々夢なき夢(後者はいよいよ実現すべき夢だが)を追いかけている。
 徐々に夢らしい夢から現実的なものになってしまった。
 幼き頃の自分を思い出して、もう一度あの時のように純粋に夢らしい目標を持ってみたいものである。
 フィギュアスケーターはトリノ五輪かバンクーバー五輪辺りの話だが、日本のフィギュアスケート選手、例えば浅田真央さんの演技に憧れたのが事の始まりである。
 滑らかなステップや迫力のあるジャンプやスピンに魅了された私は、地元のアイスリンクで開催されていたスケート教室に通わせてもらったり、祖母にせがんでスケート選手の衣装のような虹色のボレロを編んでもらったりした。
 虹色のボレロは今も実家の箪笥で綺麗に眠っているはずだが、当時のスケートリンクは早いうちに跡形もなく取り壊され、大型スーパーマーケットに変身した。
 フィギュアスケートはスポーツであるから体力は当然必要であるが、柔軟性や平衡感覚も求められる。
 特に氷上で伸びのある演技をするために欠かせないのがバレエだが、若干六歳ほどの少女には脂質の多いお菓子を絶って舞踊に励むということが大変難儀に思われたらしく、この夢は諦めた。
 スポーツ全般に当てはまることかもしれないが、余程の才能でなければ、全国レベルや世界レベルに辿り着くためには想像もできない努力やご家族の支えと相当の資金が必要になる。
 そう考えると、これは夢らしき夢で終わっていて良かったのだろう。
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