婚約者の執愛
「籍を入れるのは舞凛が大学卒業してからだけど、もう放れたくない」

そう言われ、次の日には律希の住むマンションに越してきた舞凛。

あまりにも広い部屋に、ただただ圧倒されていた。


律希の部下が手続きなど全て済ませてくれた為、舞凛は身一つで律希のマンションに来ていた。

生活に必要な物は揃っているし、身に付ける物は全て律希が買い揃えていた。

「舞凛。
今日から、舞凛は僕だけのモノ。
だから、舞凛を着飾るのも僕だから!
今後も僕が買うから、舞凛は勝手に買ってきたりしちゃダメだよ?」
と、ウォークインクローゼットに案内し言った。

更に………

「大学では僕の部下と、常に二人で行動して!
絶対一人にならないで。
で、僕が仕事中はここで留守番。
それ以外は、僕から片時も放れないでね!
大学と僕の仕事中以外は四六時中、舞凛は僕と一緒だよ!
舞凛は僕の為に生きて、僕だけに愛されて生きていくんだよ」
と言われたのだ。

そして律希の忠実な部下・山野(やまの) 日佐子(ひさこ)を紹介された。

「初めまして。山野 日佐子と申します。
舞凛様。大学内では、私がお供させていただきます。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げてくる山野に、舞凛も頭を下げる。

「あ、はい。山野さん、よろしくお願いします。
でも、あの…律希様」
「ん?」
「常に二人で行動って、私…大学に友人がいるんですが……」
「あー、その人達は絶って!
………って言っても、大学でちょっと話す程度の相手でしょ?」
「え……そ、それはそうですが……」
確かに舞凛は、親友と言える人はいない。

「と言うより、その子達にはもう話してある。
僕の舞凛に関わるなって!」

「そん…な……」

「だって、舞凛は僕のモノだよ?
舞凛は、僕だけがいればいいでしょ?
本当は大学辞めさせてすぐにでも結婚したいのを、あと一年だし我慢してあげたんだから、舞凛も受け入れて?
僕はただ、舞凛が好きなだけなんだ。
好きで、好きで、好きで、好きで、好きで、好きすぎて……やっと、婚約にこぎ着けた。
お願いだから、僕のお願い聞いて?」

やはり、前言撤回。
いくら素敵な律希でも、あまりにも勝手なやり方だ。

早くも舞凛は、結婚を後悔し始めていた。
でも………

【いいか?舞凛。
“何があっても”律希様のご機嫌を損なわせないようにしろ。どんなに理不尽でも、もう俺達は天王がいないと生き残れないんだ………
ごめんな、舞凛……】
父親の切ない表情が蘇る。

「はい。わかりました、律希様」
舞凛はグッと拳を握りしめて、頷き言ったのだった。


「あと、これ!」

そして、スマホがポンッとテーブルの上に置かれた。
「え?スマホ…ですか…?」

「今日から、このスマホを使って!」
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