婚約者の執愛
排除
車に乗り込みすぐ、煙草を咥えた。
すると、運転席から御堂が火をつけた。

「ん。ありがと」

「律希様」
「ん?」
「俊太郎さんが、殺されかけたっておっしゃってました」

「うん。殺す気だったから」

「律希様!」
「何?」
「このようなことは、もう……」

「なんで?大丈夫だよ。
“紗莉渚の時”みたいに、感情的にはならないから。
もっと冷静に殺るね」

「しかし━━━━━」

「何!?僕に口答えなんて、いい身分だね~」

「あ…いえ……申し訳、ありません……」

「わかったら、早く行って!俊太郎、待ってるんでしょ?
それに、僕も早く終わらせて帰りたい」

「はい…」

「大丈夫だよ。絶対、捕まらないから」

「私が言っているのは、そうゆうことではありません。
奥様が悲しみます」


「母さんは悲しんだりしないよ。
それに、母さんなら……僕のすることを反対なんかしない」



埠頭近くの、錆びれた倉庫街━━━━━━
その中の一つに、俊太郎はいた。

「お待たせ」
「天律」

「俊太郎。
最期に何か言いたいことある?
一応、つるんでた友達“だった”から聞いてあげるよ」

「は?最期って、なん…だよ……!?」

「だって、僕の舞凛を怖がらせて、しかもあんな舐め回すみたいに見たでしょ?
とりあえず、その目はいらないよね?」

「冗談…だろ…?」

「冗談?
そんなこと言わないよ。
こう見えて、僕忙しいの。
早く舞凛の所に帰りたいし。
はぁはぁ……
ほら、また息苦しくなってきた。
舞凛の傍にいないと、だんだん息苦しくなるんだ。
舞凛だけが、僕に命を与えてくれる。
━━━━━━言いたいことないなら、もう殺るね」

そう言って、ゆっくり俊太郎に近づく律希。

「ま、待ってくれ!!!」
「あーーー!!もう…その声でさえも、聞いてて吐き気がしてきた。
もう、黙ってよ!」

「紗莉渚!!」

「は?」
ピタッと止まる、律希。

「紗莉渚、今どうしてるか知らねぇ?」

「どうしてるかって、生きてるか死んでるかってこと?」

「は?チゲーよ!
最近、見ないから今何やってんのかなって!
親父さんの会社大変だったろ?
ほら、あいつ、天律に惚れてたから。
天律なら知ってるかなって」

「………」
「天律?」
「何もやってないよ」
「は?」

「何やってんのって、死んでるんだから何もやってない」

「は?何……言っ…てん、の…?」

「てゆーか、最期にそんなこと知りたいの?
“最期”だよ?
もっと、何かなかったの?
……………前から思ってたけど、俊太郎って、ほんと……つまんない男だね!(笑)」

そう言って笑う律希は、例えようのない位……恐ろしいモノだった。
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