婚約者の執愛
「天…律……
紗莉渚を……殺した、の…?なん…で…」

「タブーを破って、僕の聖域に土足で入り込んだから」

「は?そんなことで!?」

「そんなこと?
そんなことって何?
タブーを犯して、聖域に土足で入り込む。
最低でしょ?」

「それは……」

「そして、僕の命その物の舞凛を怖がらせて、舐め回して見る。
これも、最低だよ」

律希は俊太郎に近づき、髪の毛を乱暴に掴んだ。
そして、俊太郎の目元をなぞった。

「天律…」
「この目の中に…舞凛が入ったんだよね……」
「は?」
「この目…欲しいなぁ……」

「は?お前……何…言って…ん…の?」

「俊太郎。
この目、ちょうだい」

「え━━━━」
ゆっくり律希の手が、俊太郎の目に向かってくる。

「ウギャァァァァーーーーー!!!!!?」
何の躊躇もなく、律希は俊太郎の両目を潰した。

「あれ?取れない。
僕は、この目が欲しいのに……!」

凄まじい痛みに、俊太郎は気絶してしまった。

「あーあ。ぐちゃぐちゃになっちゃった…
もういいや!」
その後、律希は俊太郎を殺したのだった。

「律希様、後は私が……」
御堂の言葉に、律希は“うん”と頷いてその場を後にし車に乗り込んだ。


御堂は律希が立ち去った後の、この惨状を見て吐き気がしていた。

紗莉渚も、ほぼ同じように律希に殺された。

律希は紗莉渚と俊太郎の他に、過去にもう一人殺している。

それは━━━━━━━
律希の母親だ。

「あれから、15年経つな……」
思わず、呟く御堂。

御堂はその時の事を、思い出していた。


━━━━━━━━━━━━━━━
『母さん、何処行くの?』
『律希!?
ちょ、ちょっと友達とお食事行ってくるわね』

当時中学生だった、律希。
律希は、母親のことが大好きなマザコンだった。

律希の母親は、仕事が忙しくて家庭を顧みない夫への反発から浮気を繰り返していた。

そんな母親の孤独を埋めてあげたいと思っていた、律希。

しかし、母親は決して律希を受け入れることはなかった。
律希は夫にそっくりで、律希を見ていると何故か益々孤独を感じるから。


そして今日も、何処かの知らない男の所に行こうとしていた母親。
律希が呼び止めた。

『友達?
どんな?』
『誰でもいいでしょ!
律希は、明日も学校でしょ?早く、寝なさい!』

『僕が、いるよ!』
母親に抱きつく、律希。

『え……り、つき…?』
『僕がいる!父さんの代わりに、僕が慰めてあげる』
そう言って、ゆっくり母親の背中を撫でた。
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