婚約者の執愛
「え?私、スマホ持ってますよ?」
「うん。そのスマホは、解約したから」

「え?解約“した”?」

「うん。
言ったよね?
舞凛を着飾るのは、この“僕”だって!」

「え?」
「今舞凛が持ってるスマホ、僕の知らない奴等の名前がたくさん入ってる。
写真や、動画、SNSも………
考えただけで、吐き気がする。
舞凛は僕だけのモノなんだ。
だから、そんな物いらないんだよ。
わかった?
はい、このスマホ使ってね!
この中には、僕と山野とお義父さんの番号しか入ってないからね!
あ!言っておくけど、勝手に番号登録とかしないでね。
写真や動画は僕のことだけは撮って構わないけど、SNSなんてもっての他だから!」

律希が鋭く、舞凛を見据える。
その有無を言わさない表情に、舞凛は頷くしか選択肢がなかったのだった。

花柄が好きだと言った舞凛の為に、花柄のスマホカバーのついたスマホ。
その可愛らしいスマホは、何故か恐ろしく重く感じられた。



「━━━━━━━あ、律希様!お料理は私が!」
「ううん。いいんだよ?
僕が、舞凛の為にしたいんだ」

それから夕食の準備をしようとする律希を、慌てて止める舞凛。
律希はそんな舞凛の頭をポンポンと撫でて、微笑み言った。

結局律希が全て行い、テーブルの上に豪華な夕食が並んだ。

「凄い……
律希様は、何でも完璧ですね」
「そう?舞凛に誉めてもらえると、嬉しいな////!」
とても嬉しそうにはにかむ、律希。
その姿はとても可愛らしく、先程までの律希とは別人のようだ。

「早く食べよ?」
「あ、はい!いただきます!
━━━━━━━ん!美味しい~!」

「フフ…良かった!」
頬杖をついて見つめて微笑む、律希。

それからも、ひたすら舞凛の食事を見つめている。

「律希様は、食べないんですか?」
「ん?食べるよ」

「じゃあ、食べましょう!
お料理が冷えますよ?」
「うん」

「律希様?」
「ん?」

「あの…ジッと見られると、恥ずかしいです…////」
「あ…ごめんね!
舞凛が可愛くて、ずっと見てたいなって!
それにしても幸せだ。
これからは、ずっと舞凛を見ていられる!」


舞凛は終始、律希に見つめられながら食事をしたのだった。
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