婚約者の執愛
「フフ…幸せ~」
しばらくスマホ画面を見つめながら、舞凛との電話の余韻に浸っていた、律希。

スマホの待ち受けには、舞凛とのツーショットの写真が映っているのだ。

「律希様」
「あ?何!?
せっかく今、頭の中で舞凛とラブラブしてたのに!」

「申し訳ありません!
昼食はどうされますか?」
「は?
あぁ、そうだった。
別に今食べなくても、帰ったら舞凛のオムライスが待ってるし……
でも、ちょっと小腹がすいたなぁ。
なんかコンビニでおにぎりでも買ってきてよ」

「はい。かしこまりました」

「━━━━━━君も、帰ってよ」
御堂が出ていった後、まだ紗莉渚はソファに座っていた為、睨み付け言った律希。

「うん…」
紗莉渚は、肩を落とし出ていった。


そして仕事が終わり、御堂の運転する車に乗り込んだ律希。
さっそく、舞凛にメッセージを送った。

17:27『舞凛~終わったよ~!』
しかし、返事かない。

17:28『舞凛~料理中?』
17:28『返事ちょうだい』
17:29『無視しないで』
17:29『早く返事ちょうだい』
17:29『舞凛、もしかして僕のこと嫌いになったの?』
17:30『だから、返事くれないの?』

“たかが”2、3分の間の事なのに、律希は不安になり苛立ってくる。
律希は舞凛に電話をかけた。

『はい』
「舞凛!!」
あまりの不安と苛立ちに、声を荒らげる律希。

『え?は、はい!』
「今、何してたの!?」
『え……夕食、作ってました』
「あ…そっか……
僕のこと、嫌いになって無視されたのかと思った……」
『え?そ、そんなこと…
すみません!音に気づかなくて……』

「ううん。いいんだよ。
とにかく、今帰ってるから、帰りついたらいっぱいギュってしてキスさせてね」

そう言って通話を切った律希。
運転席の御堂に向き直った。
「御堂、寄ってほしい所がある」


「━━━━━ただいま」
律希が帰ると、パタパタと足音をさせ舞凛が玄関に出迎えにきた。

「律希様、お帰りなさいませ」
「………」
(可愛い…////)

「あ、あの…ごめんなさい!律希様。
メッセージ、気づかなくて…!
どうか、許してください!」

律希を怒らせてはいけない。
機嫌を損なわせてはいけない。

とにかく舞凛は許されたくて、頭を下げながら懇願した。

律希は別に怒ってない。
ただ、不安だっただけ。
でも、舞凛の懇願があまりにも可愛い。

自分にパタパタと駆け寄ってくる姿や、必死に懇願する姿。

もっと見たい━━━━━━

「許さないよ」
「え……」

律希は、スタスタと中に入りウォークインクローゼットに向かった。
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