キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~
はじまり
「……いった」
指先に赤い血がじんわりと滲む。咄嗟に人差し指を口に含めば、鉄の味が口内に広がった。
最悪だ。
目の前には、倒れた台車。その周りには、大切な資料と割れたコップの破片が散らばっていた。
10時からは、大事な取引先との会議が始まる。
時間厳守。30分前にはセッティングを終わらせておかなければいけない会社の方針なのに。
こんな時に限って、トラブルは発生するもの。
時間に間に合わない!なんて、慌ててエレベーターから駆け出してしまったせいで、台車ごと派手にひっくり返ってしまったのだ。
「と、とにかく、片付けなきゃ……」
左手の腕時計に目をやれば、すでに15分前。
10分前には会議室が開けられてしまうものだから、気持ちがけが焦っていく。