キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~
優しい真実
定時に仕事は終えたというのに、会社を出る頃は日が落ちはじめていた。
「で、でさ。さっきのどういう事?」
夕日色に染まる影が2つ並んでいる。隣を歩く甲斐くんがしっかりと私の手を握ってくるから、緊張して声が上擦ってしまう。
「はい?」
「えと、だから。さっき、本当の実力だからとか言ってたの……」
「あー、キスする前の話ですね」
「キッ、キスとかわざわざ言わなくていいから!!」
「声が大きいですよ」
「だ、だって甲斐くんが!」
「先輩、顔が赤いですよ」
「う、うるさい!!」
甲斐くんの話し方は相変わらず単調なものだから、私の叫び声だけが道端に響き渡った。