キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~



「ぶっ、部長!!!」

「さぞかし、この資料も完璧に時間内に終わらせてくれるんだろうね!」

そう言って口元を引きつかせるのは、決して見た目はスマートとは言えない中年太りの中年男性。
"ははは"なんて声にして笑っているけど、全然目が笑っていない。


「す、すみません!!」

「……すみません」

私の謝罪に続いて、甲斐くんもそう口にする。
かなり平謝りっぽいけど。

でも甲斐くんごめん。甲斐くんは止めてくれたのに、無理矢理声をかけたせいで巻き添えにしちゃって。


「七瀬くんは、頼んだコピーを風で飛ばすのも好きみたいだしねぇ」

ぐっ。確かに入社してすぐの頃、飛ばしちゃったけど、好きじゃないし。


「それに、コーヒーの豆もそのまま……」

だから、何年前の話よ。
続けられる部長の言葉に、この説教は長くなるんだろうと小さな息が漏れる。


その時、突然カーテンが大きく揺れて、窓から風が流れ込んできた。

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