キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~


「うわっ……、わわわ」

その風にのって、部長の持っていた資料が宙に舞いだした。

部長が慌てて拾い出して、何人かの周りの社員も席から立ち上がって手伝いをはじめる。



さっきまで、風なんて全然吹いてなかったのに。

窓側へ目を向ければ、やっぱり風なんて吹いていなくて、とても穏やかな空が広がっていた。



「と、とにかく!今日中によろしく頼むよ!」

飛んでった資料を全部集め終えると、部長は投げ捨てるようにそう口にして自分のデスクへ向かって背中を向ける。


長く続かなくて助かったけど、こんな時に風で飛ばされるなんてタイミング良すぎじゃない?

ふと、甲斐くんに視線を向ければ、パッチリと目が合う。

彼は口元に指先を当てながら「内緒ね」そう口を動かしてから、イタズラっ子みたいに歯を見せて目を細めた。



あ、笑った──。

ずっと隣だったのに、彼がこんな風に笑顔を見せてくれたのははじめてかもしれない。

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