鳥籠の姫
美桜が学園に通っている間、月に一度はあったお出かけをする日は、香音人が働き始めると忙しく、だんだんと行けなくなっていた。

「あの、それなら行きたいところがあって……。カラオケに行ってみたいです」

大学に通い始めてから、美桜はゲームセンターやカラオケボックスなどを知った。今まで行ったことがなく、どんなものなのか見てみたいと思っていたのだ。だが、香音人は考えることもなく「ダメ」と一瞬で否定する。

「そんな庶民の行くところでデートなんて、時間の無駄だよ。それに可愛い美桜が庶民の腐った視界に入り込むって考えたら、ゾッとしちゃう。……そうだ!ディズニーランドに行こうよ。貸し切りにして、二人きりで夢の世界を満喫しよう。うん、それがいい」

香音人が一人で勝手に決めてしまい、美桜は黙っているしかできなかった。いつもデートの行き先を決める時はこうである。

香音人は、美桜が他の誰かの目にーーー特に庶民に見られてしまうことを嫌がる。そのため、デートの際は水族館だろうが映画館だろうがカフェであろうが、常に貸し切りの状態にされてしまうのだ。
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