鳥籠の姫

美桜が鏡を見れば、そこにいたのはお上品なお嬢様ではなく、活発で明るい女の子がいた。

「何だか、自分が自分じゃないみたい！」

パンプスからスニーカーに履き替え、美桜は空き教室を出る。篤人は本を読みながら待っていた。

「小花井くん、お待たせ！」

「雛鶴さんーーー」

美桜を見た篤人は目を見開く。刹那、顔や道が赤く染まっていった。美桜は驚き、「どうしたの？」と声をかける。

「だ、大丈夫。予想以上に似合っているから驚いて……」

どこか恥ずかしそうに言う篤人を見て、美桜の中に嬉しさが込み上げてくる。香音人のようにサラリと慣れたように褒められるより、篤人に褒められる方が何故か照れてしまう。

「行こう！」

今度は美桜が篤人の手を掴んだ。触れた手の温度が心地いい。

自由に触れたその日、美桜は篤人がアルバイトをしているハンバーガーショップで初めてハンバーガーを食べた。それは、今まで美桜が食べた食事の中で一番おいしいものとなったのだ。