鳥籠の姫
「これは……」

指輪と香音人を交互に見つめる美桜に対し、香音人はニコリと微笑む。そしてゆっくりと唇が動いた。

「婚約指輪だよ。指輪がないのはおかしいなって思って、買ってきたんだ。受け取ってくれますか?」

指輪を受け取ってしまえば、香音人は大勢の前で「僕の婚約者です」と言いかねない。高価な指輪を貰っても、美桜は数時間後には駆け落ちしてしまうのだ。

「あの、香音人さん……」

大学に高価な指輪はつけていけないから、そう言って断ろうとした美桜だったが、優しく微笑んでいた香音人の目が一瞬で鋭いものに変わり、びくりと肩を震わせる。

「……受け取ってくれないんだ。それって浮気してるからだよね?」

香音人がそう言い美桜の目の前に突き出したのは、今日篤人に告白をして背後から抱き締められている写真だった。あの時、シャッター音などはしなかったはずだ。美桜の心臓がドクドクと緊張し、汗が流れていく。

「それ、一体誰が……」

「僕が雇った探偵。婚約者に変な虫がついていないか監視してもらってたんだ。でも、変な虫に自分から寄っていくなんて、美桜はお馬鹿さんだね」
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