鳥籠の姫
頬を赤く染めた香音人が微笑み、「遊ぼう」と言い手を引く。そして、美桜は香音人と共に広々としたプールの水の中へと入る。水の中で香音人が離れようとし、「まっ、待って!」と美桜は香音人の腕にしがみつく。

「ど、どうしたの?」

そう訊ねる香音人の顔は、真っ赤になっている。美桜は恥ずかしさを感じながらも、俯きながら言った。

「私、泳げないんです……」

家にあるプールでは、いつも浮き輪などに乗って楽しんでいた。だが、この温水プールには浮き輪は見当たらず、プールの底に美桜の足は届かない。香音人が手を離してしまえば、美桜は溺れてしまう。

「ああ〜……。全然気にしないで。僕にしっかり掴まっててね」

真っ赤な顔でそう言われ、美桜は香音人に抱き寄せられる。体が一気に密着し、互いの心音が伝わってくる。楽しいと言うよりは、恥ずかしいという気持ちでいっぱいのまま、二人はしばらく水の中にいた。

しばらく泳いだ後、(美桜は香音人に掴まっていただけだが)休憩をしようという話になり、プールから出て近くに置かれた椅子に腰掛ける。
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