海であなたが救ってくれました
***

 手にしていた缶の中身を無意識に飲み干し、ハァーッと溜め息を吐いた。
 近くのコンビニで購入したレモンサワーは計三本。あっという間にそのうちの二本を体内に流し込んでしまった。

 レジ袋から最後の一本を取り出してプルタブを引けば、プシュッという小気味のいい炭酸が弾ける音がする。
 それをひと口飲んだところで、浜辺に座っているのをいいことに、私は上半身を後ろに倒してごろんと寝ころがった。

 時刻は夜の八時を過ぎている。
 道路沿いに街灯はあるものの、すっかり暗くなった浜辺でお酒をあおっているのはもちろん私だけだ。

 ここはいつもサーフィンを楽しんでいる人がいたり、恋人同士が寄り添って語り合ったりしている場所だけれど、さすがにもうみんな帰ったようで。
 今だけはひとり占めだな、なんて思いながら開放的な気分になった。


「星……あんまり見えないなぁ」


 はっきりとした口調でひとりごとが出たのがおかしくて、クツクツと笑う。
 普段の私なら、寝ころんだら服が汚れるとか髪に砂がつくとか考えるはずなのに、今はどうでもいい。どうせ誰も見ていない。ひとりごとも言い放題だ。

 なにをやっているのだろう。どうしてこんなことになったのか。
 酔っている自覚はあったものの、なぜか急に冷静になった途端、あおむけの状態で目尻から涙がこぼれた。

 ……感情のコントロールが難しい。

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