海であなたが救ってくれました
 スマホのライトをつけながらあわてて立ち上がり、フラフラと波打ち際へと向かった。
 砂浜はどうしてこんなに歩きにくいのだろう。一歩進むごとに足を取られる。

 落ちた可能性のある場所にしゃがみこんでみたが、まったく見あたらない。力いっぱい投げたのでもっと先まで飛んだのかも。

 立ち上がって中腰になったところで大きめの波が来て、足首まで海水に浸かった。
 ずぶ濡れになった白のスニーカーを見つめてため息を吐きだしていると、ロングスカートの裾も少し濡れていることに気づく。
 季節は五月だが、海水温はまだ冷たい。

 でもこうなれば破れかぶれだ。
 ジャバジャバと音を立てながら、私はもう少し海の深みへと進んだ。
 なんとかライトの光で指輪の金属が光ってくれないかと願いを込めて辺りを見回す。

 さすがに海の中を探すのは難しいなと、(きびす)を返そうとしたときだった。


「なにをやってるんですか!!」


 後ろから声をかけられて振り向いてみれば、長身でスタイルのいい男性が全速力で走ってくるのが目に入る。

 探すのを手伝ってくれるのだろうか? などと呑気に考えている場合ではなかった。
 男性はあっという間に私のもとまで来て、力強く右腕を掴む。

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