海であなたが救ってくれました
「酒、飲んだんですか?」


 男性が勝手に私のバッグと空き缶の袋を地面から拾い上げた。ここでひとり酒をしていたと気づいたらしい。


「あー、そんなに大量には飲んでないかな。三缶ほど」

「でもこれストロング缶じゃないですか。アルコール度数の高いやつ。酔って海に入るとか、危なすぎ」


 偶然通りかかった人に説教をされる羽目になるとは。
 まぁでも、誤解をさせた私が悪い。この人は私を助けようとしてくれただけなのだから。
 今は、迷惑をかけてごめんなさいと謝るしかない。


「で、なにを落としたの?」

「……え?」

「探し物ですよ」


 彼の説教をしおらしく受け入れていたら、再び質問が飛んできた。
 私はさすがに言葉を詰まらせ、海のほうへ視線を送った。


「必要なものではないんです。うっかり投げ捨てちゃったから、ちゃんと回収しなきゃと思っただけで……」

「だからなにを?」

「……指輪、です」

< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop