赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


悪い意味ではなく、彼女はとても単純で素直でやっぱり可愛い子だと思う。
匡さんを好き同士でなければ、友達になりたかった。

麻里奈ちゃんの心情的にそれは無理だし、匡さんへの恋心を知った以上、私から打診するほど無神経にはなれないので、そこが残念だ。

それにしても、麻里奈ちゃんが私に誰か男性を紹介する可能性を考えて心配するなんて、匡さんは滝さんの言う通り、だいぶ祥子さんや麻里奈ちゃんを警戒しているらしい。

過剰にも思える心配に少しおかしくなりながら首を横に振る。

「いえ、そこまでは全然」
「だいぶ麻里奈が吠えていたと滝から聞いたが」

ネクタイを緩めながらこちらを横目で見る匡さんに、苦笑いを浮かべる。

「あー……でも、ちょっとだけです。麻里奈ちゃん、匡さんのことが好きだから、立場的に私を嫌うのは当たり前ですし」

嘘をついていないかと観察するように見ていた匡さんだったけれど、信じてくれたのか、ようやく視線が外れホッとした。

「匡さん、ネクタイしまいます」

匡さんが外したネクタイを受け取り、ウォークインクローゼットの一角にある、専用のケースにしまう。

匡さんは自身の身支度は基本的に自分で行うけれど、同居して数日経った頃、何か役に立ちたいと思い〝ネクタイ係がしたい〟と申し出たら頷いてくれた。

ちなみに、それ以外の〝掃除係〟や〝買い出し係〟などはすべて却下されたので、今のところ、ネクタイを選びしまうのが私の唯一の仕事だ。


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