赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
本当ならネクタイをしめる役割も任せてほしいのだけれど、接近することを思うとなかなか恥ずかしくて言い出せず今日まで来ている。
ベッドを共にする仲でも、それ以外の接触を匡さんはあまり好まなそうだから余計にだった。
「あの親子は一時の感情で動く。何をするかわからない。今後は、麻里奈が来た際には監視の意味で滝をドア前に立たせる」
くるくると丁寧に巻いたネクタイをしまい、明日はどれがいいかと眺めていると、急にすぐ後ろから声がして肩が跳ねる。
いつの間にか背後に立っていた匡さんに驚きながら顔半分だけ振り向いた。
「あの、さすがにそこまでは……滝さんにも仕事がありますし、私ひとりでも対応できますから」
匡さんが思っているほど険悪な仲ではない……と思う。
でも、勝手にお見合いをたくさん持ってこられたり、結婚や跡取りを急かされてうんざりしている匡さんからしたら、そう呑気に構えてもいられないのかもしれない。
ある程度のことなら〝放っておけばいい〟と流しそうな匡さんがここまで言うのだから、祥子さん……そして麻里奈ちゃんにもよほどしつこくされたのだろう。
問題にならないうちに芽を摘んでおきたい気持ちはわかるものの、麻里奈ちゃんとできればまた話したいと思っているので頷けずにいると、肩を掴まれ強引に向き合わされた。