赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「もう、匡さんじゃなくて私が外で働きたいって思っちゃう。そしたら匡さんはゆっくり家にいればいいし、誰の目にも触れないですむのに」

まったくもって現実的じゃないことも、やけみたいな願望だということもわかった上で言った言葉だった。

当然、〝うわー、その思考回路やばいですね〟という風な笑い声が返ってくると思っていたのに、予想に反して相葉くんはスッと答えた。

「それと同じことを思ってるから、匡さんも美織さんを囲ってるんじゃないんですかね」

何でもない顔で作業を再開する相葉くんの言葉がうまく理解できずに何度か瞬きを繰り返す。それからやっと口を開いた。

「え、違うよ。匡さんは私が奥さんだって周りに知られるのを嫌がってるんだと思う」
「だったらまず結婚式なんかしてお披露目しないでしょ」
「それは、桧山グループとして、会社の関係もあるからだよ」

実際、あの結婚式は私のお披露目というよりは雅弘おじ様や匡さんと招待客が挨拶を交わす場だった。

もちろん、私に気を遣ってなのか匡さんはなるべく私の隣にいてくれたし、そこまでビジネス色が強かったわけではないけれど。

「匡さんが私を選んだのは、駒として一番無難だったからだよ」

親同士も幼馴染で本人同士も幼馴染。そんなクリーンな関係性と、うちがどこの企業とのしがらみがない一般家庭だったから。

そう説明すると、相葉くんは少し納得できなそうな顔はしつつも、ひとつ頷いた。


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