赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
作業している場所が家に近いことと、窓を開けていることもあり、リビングの壁に設置してあるモニターに向かって話す滝さんの声まで耳に届く。
「何度いらっしゃられてもお通しできません。どうぞお引き取りください」
厳しい声色の滝さんを見て、しつこい勧誘かなと判断する。
そういえば、最近は昼夜問わずしつこくインターホンが鳴っていたのを思い出す。
「営業ですかね」
「多分。でも、平日の日中なんて匡さんがいないってわかるだろうにね」
家主の不在を知りながら訪ねてきても無駄足でしかないのに……と考えていると、相葉くんが話題を戻した。
「まぁ、縛り付けすぎとか言いましたけど、俺からしたら理由はどうあれ羨ましい限りですけどね。一日中好きなことができるわけだし、働かなくても優雅な生活ができて、これぞ玉の輿!って感じじゃないですか」
軽く言う相葉くんに呆れながらも、そんな呑気さに救われる。笑みを返し、作業を続ける。
そうして、三十分ほどが経った時だった。
「ちょっと美織さん! なにボケッとしてるの?!」
静かだった庭にキンとした声が割り込んできた。
玄関に繋がる方向を見ると、目を吊り上げた麻里奈ちゃんがこちらに向かってズカズカと歩いてくるところだった。