赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「あ、麻里奈ちゃん。おはよう。今日も早いね」
衝撃の初対面から二週間。三日と空けずに顔を出す麻里奈ちゃんが来るのは必ず午前中だ。
案外規則正しい生活を送っているんだなぁと感心していると腕を掴まれ引っ張られる。
「それより大変なんだってば。早く来て! 匡くんが、変な女と一緒にいるの。今日は仕事のはずなのにおかしくない?」
たしかに今日は平日だし、匡さんは朝いつも通りの時間に家を出た。
本来なら今は会社にいるはず……と考えていると、剪定を終えた相葉くんが脚立から降りてくる。
「まぁ、とりあえず行ってみればいいんじゃないですか? 作業もひと段落ついたところですし。で、現場はどこですか?」
軍手を外しながら〝現場〟なんて単語を持ち出して聞く相葉くんはどこか楽しそうで、完全に他人事だ。
けれど、そこに引っかかっている場合でもない。
「すぐそこ。この家の東側の通りだから、裏門から出たら覗けると思う。こっち」
麻里奈ちゃんが答えながら私の腕を引っ張り歩き出す。
桧山家に住むようになってから約一カ月半。この家に裏門があるのは知っていたけれど、通るのは初めてだった。
普段は滝さんたちがゴミ出しや食品の運び入れのために使っている裏門は言葉通り、玄関や駐車場用のシャッターとは反対側にある。
そこを抜け、ぐいぐい進む麻里奈ちゃんに引きずられるようにしてついていく。
麻里奈ちゃんが足を止めたのは、桧山家の北側に面している細い道が東側の通りとぶつかる所だった。