赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


私たちを振り返り〝静かに〟と人差し指を口の前で立てる仕草をした麻里奈ちゃんが塀の角からそーっと覗くので、私も麻里奈ちゃんの頭の上から同じように顔を出す。

まだ匡さんと女性がそこで話しているかもわからない上、もしも匡さんがこちらを向いていた場合、目ざとい匡さんに速攻で見つかる可能性もあったけれど、幸い、匡さんは背中を向けていて、まだ会話も続いているようだった。

朝、家を出たのと同じスーツ姿の匡さんと向かい合うようにして立っているのは、髪が腰のあたりまである女性だった。

年齢は匡さんより少し上に見える。
三十代後半といったところだろうか。整った顔にはほどよくメイクが施されていて、表情ひとつひとつが大人っぽく色気を含んで見えた。

パンツスーツで包んだ体はスレンダーながらも女性らしさがうかがえる。

同性の私から見ても、カッコよくて思わず憧れずにはいられないような女性だった。

会話までは聞こえないものの、ふたりが真剣な表情でいるのはわかる。
お互いにお互いを同等の立場だと認めているような、信頼し合っているような関係に見えた。

信頼……と、眉を寄せていた時、私の上から顔を覗かせた相葉くんが「あれ?」と声を漏らした。


< 114 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop