赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「はい。報告もなしに……と言うか、勝手に抜け出してすみませんでした。あと、許可もなしにすみません」
理由はどうあれ、あれだけひとりでの外出は避けるように普段から言われていたのだ。
約束を破ったことを謝ると、匡さんは「いや」と否定した。
「俺の許可は必要ない。髪だけじゃなく、化粧品や衣服のような身の回りの物は美織の好きにすればいい」
まぁ……そうか。
勝手に抜け出したことだけが問題で、匡さんにとっては私の髪型や服装はどうでもいいのだ。
だから、「はい」を返した声にショックが滲んでしまっていた。
「許可を取る必要もないし好きにしてくれて構わないが……ただ、髪型については相談はしてほしい」
「え」
「こんなにバッサリ切るなら、俺も覚悟はしておきたかったし、昨日の夜、長い髪をもっと触っておきたかった」
後ろから抱き締められているので、匡さんの表情は見えない。
でも、声が少しだけ落ち込んでいるように聞こえ……無性に顔を見たくなった。
グッと力を入れ、私の腰に回っている匡さんの腕を解く。そして、向き合うと彼をジッと見上げた。
動揺する様子ひとつなく私を見つめた匡さんは、短くなった髪先を触りながら続けた。
「この髪型が似合っていないわけでは決してなく、情の話だ。美織の髪は気に入っているから、突然短くなられたら戸惑う」
「……すみません」