赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
ガシャン、という陶器が割れた音に体が跳ね、心臓が一気に駆け足になる。
お皿が割れたのだろうとすぐに理解できたのに、ガシャンという音がいつまでも耳に残っていて離れない。
自分が呆然としていたのだと、匡さんに「美織?」と呼ばれ初めて気付いた。
「あ……すみません。びっくりしちゃって」
「いや。……大丈夫か?」
ただ、音におおげさに驚いてしまっただけなのに、心配そうに聞かれ笑顔で「はい」と頷く。
それと同時に、滝さんたちの存在を思い出し慌てて匡さんの胸を押す。
滝さんたちが仕事をしている中、いったい何をしているのだろうと一気に現実に引き戻された。
「あ、あの、すみません……仕事中だったんですよね」
仕掛けてきたのは匡さんの方だけれど、私もすっかりその気になってしまった。
それを恥ずかしく思いながら目を伏せてなんとか笑うと、匡さんは私をじっと見てから「いや」と答えた。
「終わったところだ。問題ない」
背中に回った匡さんの手が、下着をつけ直してくれる。
今更ながらこの距離感に照れてしまい肩をすくめてジッとしていると、しっかり服まで整えてくれた蓮見さんが私をジッと見る。