赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「里美さんに勧められたら断るわけにはいかないだろう。別にバウムクーヘンの一切れくらいはなんでもない」
匡さんはそう言うけれど、そんなことはないと思う。匡さんは立派なスウィーツ嫌いだ。
だからこのクッキーだってだいぶ甘さを抑えて作っている。
それに、たぶん、バウムクーヘンはどれももれなく甘いと思うし、母の切り分けるひとり分は大きい。
それでも、私の母だからと気を遣って食べきってくれるのだろうか……と、来週末の匡さんの姿を想像したら自然と笑みがこぼれていた。
「そのときは濃いコーヒーを入れますね」
「ああ。頼む」
素直な匡さんに笑いながら、幸せだなと思う。
外出禁止という点や例の女性について色々気になることも心配なこともあるけれど、それはとりあえず忘れて、ここぞとばかりに胸の中で甘えることにした。